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認知症になると財産が凍結されてしまうのではないか、という相談者様のお話をよくお聞きします。これは半分は正解、半分は間違いです。実際どのようになるのか、法律ではどうなっているのか等を遺言・終活専門の行政書士が分かりやすく解説します。

認知症になったら財産を管理することができない

認知症になった状態を、法律では【「意思能力」が「喪失した=ない」状態】となります。
これを分かりやすく言うと「判断能力が無くなった状態」です。

民法では、意思能力がない人がした法律行為は「無効」と規定されています(第3条の2)。

この法律行為とは、契約をすることや、相続をすること等の自分の権利に関わるような行為を理解したうえで自分の意思を表示し、実際に行動することを指します。

実際に財産の管理などについてこれがどのように影響するのか、具体例を挙げながら解説します。

不動産の場合:売買、賃貸ができない

認知症になって判断能力がなくなった場合、自己名義の不動産を売買したり、賃貸に出すことができなくなります。

これは前に述べたように、判断能力のない人の契約行為が無効となるからです。

例えば、施設に入居する資金を捻出するために自宅を売却するといったことができなくなりますし、あるいは賃貸物件として貸し出すこともできなくなります。
また、アパート等を賃貸物件として貸しているときも、新たな入居者に貸し出すことができなくなります。

預貯金の場合:入出金ができない(凍結状態)

預貯金の場合は、入出金ができなくなります。
お金を引き出す、預けるという行為は、金融機関に対するお金の債権債務のやり取りとなるためです。
認知症になって判断能力がなくなると、本人の意思が確認できないこととなり、お金の出し入れが制限されるということで、いわゆる「凍結状態」となります。

例えば、窓口でお金を出し入れするとか、定期預金を解約したいという行為ができなくなります。

もっとも、普通口座ならATMでキャッシュカードと暗証番号があれば入出金ができるため、窓口を介さずに入出金をしているケースが多いと思われます。

財産を管理するためには成年後見制度や任意後見契約の利用が必要

このように、認知症によって判断能力がなくなった後、不動産や預貯金などを本人が管理することができなくなります。

家族が本人に代わって管理をしているケースも多いと思いますが、その行為も厳密には無効の可能性があります。
自分の財産を代わりに管理してもらうことを、民法では「委任契約」といいます。
つまり、判断能力がなくなった状態で「委任契約」をしても、その契約自体が無効になります。

判断能力がなくなった後、本人の財産を正当な手段で代わりに管理するためには「成年後見制度」「任意後見契約」「家族信託」を利用する必要があります。

成年後見制度などの詳細については、それぞれ別のページで解説しますので、そちらをご覧下さい。

単にキャッシュカードを預かって管理するのはトラブルの元になるかも

認知症になる前の元気なときから、家族の方がキャッシュカードを預かってお金を管理している、というケースもよく耳にします。
その行為自体は否定されるものではありません。

しかし、本人が認知症になった後もその状態を続けるのはトラブルの元になる可能性があります。
その財産管理についての「委任契約」はほとんど「口頭」でされていると思います。
そうなると「いつから」「どの範囲まで」の財産を管理することなのか曖昧になります。

そうして、いざ相続になったときに本人の通帳を見てみたら「お金の減り方がおかしい」「何にどう使ったのか」ということで家族間でトラブルに発展するケースもあります。

トラブルを避けるためには、曖昧な管理ではなく、成年後見制度や任意後見契約、家族信託を利用されることをおすすめします。

【結論】元気なうちに準備をしておく

ここまでご説明したように、認知症などで判断能力がなくなった後では、本人の財産はまさに「凍結状態」となって管理をするのが困難になります。

成年後見制度や任意後見契約、あるいは家族信託など、適切な方法で財産の管理をしてもらうことで、家族間の無用なトラブルを避けることができます。

そして、それらの対策は、もちろん、元気なとき(=判断能力があるとき)にしかできません。
今お元気なうちに、あるいは、親御さんがお元気なうちに、どうやって準備していったらよいか考えてみませんか。

当事務所はご本人様、ご家族様の色々な事情、立場を考慮しながら、最適な解決方法を一緒に考えることができます。
どうぞ、お気軽にご相談ください。

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